【第XX回 SMAP全体会議】
「それでは歌っていただきましょう!」
「えっ!?」
1月31日、集合時間に遅れる安定の挙動で会議室のドアを開けた慎吾の耳に、中居の声が飛び込んできた。
「香取慎吾で、『10%』!」
「いやいやいや!」
後ずさる慎吾に、木村がマイクを手渡す。イントロのラップパートが流れ出し、
「てんぱーって、一割…、のーにやさし、そーきゅー…、いやなんなの!」
「てんぱーって!?」
続きの歌詞を、歌詞カードを見ながら中居が促す。
「って、偽り、じょじょーにぼでぃぶろ、セクシー…」
事情が解らないままぼそぼそと、歌うというより呟いていた慎吾は、中居の目が余りに真剣だったため、最後までとりあえず歌いきった。
「なんだ。覚えてんだ」
歌詞カードを見ていた中居は、つまらなさそうに歌詞カードをぱらぱらとめくる。
「いや、さすがにさぁ、この曲は何回か歌ってるから覚えてんじゃない?」
木村も、向かいから歌詞カードを覗き込んでうなずいた。
「どれ、あんま歌ってない?」
中居に言われ、吾郎と剛も中居の手の歌詞カードを覗き込む。
「なんなの、あなたたち!仲良し小動物みたいだよっ?」
「チュー!」
円になって歌詞カードを見ている輪から、中居の声がする。
「俺らネズミだったんだ」
「ミーアキャット的なものかと思った」
「あー、可愛い可愛い、ごろーさんはミーアキャットみたいに可愛い可愛い」
「可愛くて悪かったね!」
「まぁまぁ仲良し小動物なんだから仲良くしようぜ」
と、中居と吾郎の言い争いを遮り、中居の手から歌詞カードを木村は取り上げた。
「どんな痛みも〜♪」
「あっ!木村くんが歌ってる!」
「俺、これ好きなんだー、FUTURE WORLD」
「わー、嬉しいー!」
「そこでだ香取慎吾」
「さっきからなんなの、中居くん!」
「おそらく、FUTURE WORLDが好きだというファンは多い。だからこそ、歌詞を間違えて欲しくない」
「え、何これ。これ、歌詞覚えてるかテストなの?」
うんうん!
仲良し小動物の輪の中から、剛がこくこくうなずいてくる。
「覚えるよ!ライブまでには!」
「覚えるとか…」
重々しく中居が首を振る。
「ここじゃない」
そして、自分の頭を指先で叩き。
「ここに」
仲良し小動物の輪を離れ、慎吾の胸に握った拳を当てる。
「ここに刻み込め!」
「よくある表現!」
「それでは歌っていただきましょう!」
「またー!?」
今度は木村が紹介する。
吾郎が、さっ!とCDラジカセに近づく。
「香取慎吾で『FUTURE WORLD』!」
「BiSHいねーと無理ー!」
「まぁまぁ、冗談はこのぐらいにしておいて」
この後、『20200101』から3曲、新しい地図から2曲歌わされたところで、ようやく慎吾はバースデーボーイとして扱われることになった。冗談はこのぐらい、と言う中居から、三角のパーティー帽子を渡され、冗談は終わっていないのではと思ったが口にしない。
アメリカンな、派手な色のでかいケーキと、ビールとでカジュアルな乾杯。
「で?プレゼントは?有り余るお金と、有り余るセンスのある皆さんからの、可愛い末っ子慎吾ちゃんへの誕生日プレゼントはなんなんでしょう?」
「すごいの用意した」
「え、つよぽんのすごいのって、8周回ってしょうもなさそう」
「いや、ほんとにすごい」
吾郎が再びCDラジカセに近寄る様子を見た慎吾は、実はもう一台CDラジカセがあることに気づいた。
2枚のCDを平行して聞こうと思ったら、2台再生機を用意するしかなかった懐かしい時代のように。
「それでは歌っていただきましょう」
2台目のCDラジカセに指を置いた吾郎が言い、剛が続ける。
「中居正広と木村拓哉で『UNIQUE』!」
「マージーかーーー!!」
『(木)君のいる世界と
(中)君のいない世界じゃ
(木)まるで意味が違うんだ
(中)それに気づいてほしい
(木)背筋を伸ばして
(中)元気に歩く君を見て
(木)よっしゃがんばろうって思う
(中)誰かがいるんだ
(木・中)だからこの歌を唄うんだ
Happy Birthday to you♪』
ぎゃー!!豪勢ーーー!
女の子アイドルっぽい可愛らしい振付で歌う木村と中居に、慎吾は意識が飛びそうになる。
なんなの、その振付。AKBでもやらない。超可愛い。
『(木)君のいる世界と
(中)君のいない世界じゃ
(木)まるで意味が違うんだ
(木・中)それに気づいてほしい♪』
「っていうか、それ、お前らが言うなー!」
『(木・中)それに気づいてほしい〜〜♪』
お誕生日おめでとうございます!2020・1・31
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