【第?回 SMAP部分会議】
『こちらN、現在地をお知らせください。どーぞ』
『え。えーっと』
『返事返事!』
『あ、えっと、駐車場到着しました』
『こちら?』
『こちら?あぁ…、こちらK、駐車場到着しました』
『こちらのフロア、問題なし。至急移動お願いします』
『了解。移動します』
『誰が?』
『……。K、移動します』
『エコノミーとか乗るの久しぶりー、こちらN、どーぞ』
『セレブぶってんじゃねーぞ、どーぞ』
『セレブだわ!どーぞ』
『機内でこれ逆に目立つし、電波を発するものは切らなきゃいけないんで、電源切ります。どーぞ』
『ライン繋がらなくて、さぞ不安でしょうけど心を強くもってくださいね、どーぞ』
『やかましいわ、どーぞ』
『あっ!機内わいふぁいサービスもあるみたいですよ?よかったですね、どーぞ』
『き・り・ま・す!』
「ここに来て、はじめてしみじみ見たけど、それは、何のコスプレなの」
タクシーの後部座席で、木村は中居に尋ねた。
「セレブぶってる二流芸能人。あれ?芸能人かな?いやでも芸能人はエコノミー座らないよね、という二周回った変装」
黒い大きめのハット、大きめのサングラス、黒いマスク、により、中居の顔はほぼ肌の部分が見えていない。黒いコートを始め、黒づくめのやり過ぎ感が、二流芸能人感を演出。
「て、いうか、そっちは何」
「急な出張に慌てて飛行機に飛び乗ったビジネスマン」
やや疲れた感じの地味なスーツに、やや疲れた感じのトレンチコートに、前髪を厚くおろしての、黒ぶちだて眼鏡。
「それ、単に只野仁だろ」
「あ!ほんとだ!似てるかも!」
N、こと二流芸能人、および、K、こと只野仁が到着したのは、とあるレストランの厨房だった。
「あんま時間ないから、デコレーションだけやろうと思って」
「ん。がんばって」
「いや、がんばってじゃねーよ、おまえもやるんだよ」
「ごめんなさい。セレブなもんだから、箸より思いものは持ったことがございません」
「マイク持てよ!箸より重いマイク持て!」
「マイクでケーキのデコレーションができるんだったらやるわ!」
「箸より軽いキャンドル差すくらいできんだろ!」
「できるわ!どんだけ俺が几帳面か知ってんだろ!」
「うわー…。計ったように等間隔…」
綺麗なデコレーションが施された上で、あまりに等間隔に、あまりに垂直に、キャンドルが差されたバースデーケーキが出来上がった。
その頃、店内で騒ぎが起こる。
「えっ!ほんとに韓国きたの!?慎吾も!ごろさんも!」
「来たよ。誕生日だし」
「えーーー!なにそれー!冗談ハンバーグだよー!!」
「…。ここは『がびちょす』じゃねーのか、あいつは…」
「さすが剛…」
「びっくりした?」
「したよー!なんだよー!ごろさんまで一緒になって、教えてくれてもいいじゃーん!いや、でも、あ、慎吾誕生日おめでとおめでと。乾杯しよ、乾杯。グラスお願いしますー!」
そこで、グラスではなく、ケーキが登場する。
「お誕生日おめでとうございまーす」
「香取さん、おめでとうございまーす」
「……。ね、何やってんの?」
「香取さん、お誕生日おめでとうございまーす。ケーキでーす」
「ケーキはわかるけど、ねぇ。中居くんはともかく、木村くんが何やってんの」
「『中居くんはともかく』ってどういう意味がぶっとばすぞばか野郎、お誕生日おめでとうございまーす」
「前半と後半の言葉がめちゃめちゃだよ!ごろちゃんっ?」
「知らない知らない!え、剛知らないよね…?」
「しらなーい!何やってんのー、二人とも韓国まできてー!」
「日本からは深夜便があるのに、韓国からの深夜便がねーじゃねーか、明日昼から撮影にしてもらったよ、誕生日おめでとー!」
「むちゃくちゃだぁ!」
「ささ、この几帳面な男が等間隔にさしたキャンドルに火をつけて」
「等間隔だねぇ…」
「はい、おめでとうおめでとう!木村がアレンジと間をたっぷり使って歌い上げます、お聞きください。Happy Birthday!」
なっぴばーすでー♪に聞こえる木村独特の歌い方でのHappy Birthdayに、戸惑いがとまらない慎吾以外の声が合わさった韓国の夜だった。
2018・1・31
06お誕生日メッセージへ