【第一回 SMAP全体会議】
「はい、あ、香取さんお疲れ様です」
「え。中居くん…?え、これ、何…?」
都内某スタジオに、予定時間よりちょっと遅れてその部屋に入った慎吾は、会議室の様子にドアを開けたまま固まった。
「なんで、SMAPが、いるの。え、ごろちゃんは暇そうだからいいとして、なんで沖田先生がいるの。え、ドラマは?撮影は?」
「暇じゃないよ!」
「俺はどうなんだよ!」
「嘘の戦争の人、嘘ばっかじゃん!」
「嘘なんかついてないじゃん!」
「パワスプの収録って…」
「そんなこと言ってなーい」
慎吾はスマホを出して、短い剛からのメールを見返す。そのメールに何時にスタジオ、とは書いてあるが、ラジオの収録とは書いていなかった。
「えぇ〜…?」
「はいはい、全員そろったんで、第一回SMAP全体会議するんで、はい、香取さん、座って座って。稲垣さん、準備準備」
「なんで僕が…」
ぶちぶち言いながら、吾郎は立ち上がり、冷蔵庫から缶ビールを出してきて慎吾の前に置いた。
「ビール…?ってノンアルコールじゃんか!」
やや縦長のテーブルで、ホワイトボードを背中にして中居と木村が座り、木村の向かいに吾郎、中居の向かいに剛がいて、慎吾は剛と中居の間、いわゆるお誕生日席にいる。
「あ、知らない?」
吾郎があぁ、冷たかった、あぁ、重たかった、と言わんばかりに手を振りながら席に戻りつつ言った。
「世界全体会議って、ノンアルコールビールとともにやるんだけど」
「知らないよ!何それ!」
「なんで知らないの!ゴロデラでやったのに!」
「そんなの見てないよ!」
「見なさいよ!」
まあまあまあ、と、沖田先生こと木村が二人の間に手を出す。
「俺は見てるから」
「だよね。やっぱり木村くんだよね」
「俺も見てるよ?」
「嘘だね。中居くんのそういうセリフは一ミリも信用できないね」
「なんでだよー。中居は本好きだぞー?」
「そうだぞー?」
「あ、じゃあ中居くんさ、書評本でも出したら?それで来ればいいじゃん、ゴローデラックス」
「ぜってー!ヤダ」
「その言葉は信用できるんだよなぁ…」
首をひねる吾郎に、中居は畳み掛ける。
「万が一書評本を出すことがあっても、ゴローデラックスには出ないって意味のヤダな」
「解ってますよ。わざわざ言わなくていいですよ」
カカカ、と人の悪い笑い方をしておいて、中居は真顔になる。
「はい、ではお忙しいところ、特にお二人ね、A LIFE 嘘の戦争の」
「一つのドラマみたいにするな」
「A LIFE 愛のままにわがままに僕は君だけを」
「ねぇこれ何!?大喜利!?大体、『愛しき人』で、『愛のままに』ってきたら、響き的におかしくない!?って、そんなことどうでもいいんだけど!」
「香取さん、おっしゃる通り」
真顔のままだが、より素に近い真顔に戻って中居がうなずく。
「別に暇を持て余した神々が大喜利しに集まってる訳ではなくて、木村さんから議題の提案があり、これはもう第一回SMAP全体会議を開くしかあるまいということになり、皆様にお集まりいただいた訳です」
ぱちぱちぱち。
慎吾以外の三人が真面目に手を叩く。
遅れて、ぱち・ぱち、と無意識に手を叩きながら、これは何が起こっているのか、まったく理解できず、慎吾は四人の顔をきょときょと眺める。
「議題ってなにー?木村くん」
「あ、議題」
機嫌よい剛に聞かれ立ち上がった木村は、後ろにあるホワイトボードに、まず『第一回SMAP全体会議』と書く。そしてペンの色を黒から赤に変えて、より大きく議題を書いた。
『2017年1月31日 香取慎吾誕生日サプライズについて』
「いますから!」
「なるほどねー…」
吾郎がうんうんとうなずく。
「慎吾、今度の誕生日で40だからね、不惑だからね。いや、ラジオではちょっとお祝いしたけど、やっぱりもうちょっとー」
「いや、誕生日の本人、ここにいますから!」
「この議題を木村さんからいただいて、あー、やっぱり違うな、ドラマで忙しいのに、木村さん、思いやりあるなって、これはもう第一回SMAP全体会議にふさわしい議題だなって」
「いやいや、誰の中にもあった想いを、たまたま口にしたのが自分だったってだけですよ」
「何この茶番!?」
「そして、親友の草gさんから、香取さんのね、サプライズバースデーをするにあたって、どういう内容が香取さんにふさわしいか聞きてくて」
「本人に聞いてぇ〜!?」
「はい」
「はい、稲垣さん」
「サプライズにも、いわゆるどっきり系と、おじゃマップみたいなハッピーサプライズ系がありますけど、どちらがいいんですかね」
「そりゃハッピーサプライズだろ」
1月30日から、31日になるタイミングで慎吾を捕まえて、クラッカー鳴らして、派手にお祝い。大きなケーキ、好きな音楽、見た目にも楽しい料理やお酒、たくさんのプレゼント。
そういう木村の言葉に、3人からもどんどんアイディアが出てくる。
「あー、ちょっともうこれ、会議っていうか」
中居が笑う。
「香取さんの好きなものは何か、について話す会みたいになっちゃいましたけどねー」
ホワイトボードに張り付いていた中居が席に戻る。ホワイトボードは、中居のちまっと丸い字で埋めつくされ、それを木村がアイフォンで撮影。デジタル化して共有することになった。
「じゃあ、30日から31日、香取さんが何してるかは、草gさんにリサーチしてもらうとして」
「ほーーい」
「稲垣さんは、あんまり気持ち悪くない程度の場所を押さえてください、っと」
「何、気持ち悪くないって」
「すげー暗いとか。すげー変な音がしてるとか。すげーなんかよく解らない煙が漂ってるとか。そういうんじゃないところですね」
「逆にどこにあるの、そんな店…」
「木村さんは、撮影の合間なんかにプレゼントとかね。大好きなスマホにかじりついて調べていただければ」
「言い方!」
「香取さん、大丈夫ですか?あんまり発言なかったですけど」
「何を言えばいいの!この状況で!」
「はーい、じゃあ、そろそろA LIFE 愛しき嘘の戦争のお二人がタイムアップということで」
「そんなドラマいやだよ!」
「では、第一回SMAP全体会議、終了させていただきます。とはいえ、皆さん持ち帰りがありますから、しっかり担当してください。お疲れ様でした」
「「「お疲れ様でしたー!」」」
「なんなの…」
香取慎吾不惑の誕生日、2017年1月31日の、単なるどっきりだった。
楽しい1年を!
お誕生日おめでとうございます!2017・1・31
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