木村拓哉様

 

【第X回 SMAP全体会議】

『まぁ、いつもとそんな変わり映えしないんだけど、木村くん誕生日のお祝いしたいからさー』
と、慎吾に声をかけられ、SMAP特別会議室に時間より10分早くやってきた木村は、無人の会議室に、一番乗りしちゃった、と思う。
性格的に早めに現場入りしたいタイプだが、自分が早く入ると、それよりも早くスタッフが入らなくてはいけないと散々言われ、5分前に入るくらいにとどめようと努力している。でも、SMAP相手なら、誰が先に来なきゃもないので気にせず早めに入れていい。
コーヒーメーカーに人数分のセットして、その香りを楽しんでいる時に、廊下から賑やかな声がした。
「そんな全員揃ってくる?」
と、ドアの方を見てると、ドヤドヤ!という擬音がふさわしい様子で4人が入って来た。
「おはよ…』
「いや、そういうことじゃなくない!?」
木村の声は慎吾にかき消される。
「だって俺の誕生日なかったじゃねぇか!」
「木村くんがイタリア行ってて勢揃いできなかったからじゃん!なにそれ!やったらやったでぶーぶー言うし、やんなかったらやんなかったでぶーぶー言うし!」
「でもさあ」
流れるようなスムーズさでコーヒーメーカーからお気に入りカップにコーヒーをそそぎ入れながら吾郎が言った。
「それぞれプレゼント渡したでしょ?僕、生まれ年のワインあげたじゃん」
「古い飲み物な」
「言い方!」
木村の隣に座り、吾郎はとんとんテーブルを叩く。
「中居くんちで管理するのたいへんだろうからうちで管理するし、飲みたくなったらどこでも開けに行くって行ってるのに!」
「なんでもれなくお前がついてくるプレゼントなんだよ!」
きぃぃ!
きっ!と吾郎が木村を見た。
「何っ?」
「僕、木村くんにもあげたことあるよね!生まれ年のワイン!」
「あるある。でも、結構前だだよな?」
「その時、木村くんがどういったか、知ってるっ?」
「はぁ?」
バカにしたような顔をする中居に、すっと立ち上がった吾郎がやや芝居がかった風情で語った。

「『ありがとう、吾郎。生まれ年のワイン?すごいな。俺、ちゃんと開けられるか解らないから、開けてくんない?一緒に飲もう?』」

惚れてまうやろーー!!

中空に向かって叫ぶ吾郎の声に、うん、うん、と、剛も慎吾もうなずく。

「そういうことだよ中居くん。木村くんはね、まずありがとうって言える人なんだよ」
「いやでも」
木村が手を挙げる。
「中居に誕生日プレゼント渡したら、ありがとうって言ったよ?」
「今年?何渡したの?」
「オオタニサンのサインボール」
うんうんと中居がうなずく。
「オオタニさん?」
慎吾は首をかしげるが、大谷翔平と言われ、さすがに知ってると驚く。
「え、なんで木村くんが、大谷翔平のサインボールもってんの?」
「話は長くなるけど、俺しばらくイタリアいたじゃん。夏に。そこの撮影スタッフに野球好きの人がいて、うちにも野球好きいますって中居の話してたら、オオタニサンのサインボールもってきてるって話になって、なんだかんだで、撮影終わった時にプレゼントしてくれて」
木村は、手のひらを上にして、中居の方に向ける。
「渡すしかないじゃん」
「ありがたくいただいた。大谷に会いたい」

だから。
と、慎吾は繰り返す。

「オオタニサンのサインボールをくれた木村くんの誕生日をみんなで祝いましょうってゆってるのに、自分の時はなかったからやだって、それはなんなの」
「だってやんなかったじゃん!」
「木村くん、なんなの、この木村くんの同級生!」
「いや、俺に言われても…!」

「不思議なんだけど」

翌日に舞台初日を控え、ほんとに来てていいのかこいつ、と木村が内心思っている剛がのんびりと口を開いた。
「中居くんって、ちょっとひねくれたとこあるけど、なんで?」
「なんで?中居くんがなんでひねくれてるかってこと?」
吾郎に尋ねられ、剛はうなずく。
「だってさ、三人兄弟の末っ子で、お父さん、お母さん、お兄さんたちに可愛がられて育ってさ、苦労はしたけど、スターにもなって、どこでどうやってひねくれたの?」
下3人の目が、中居に向けられ、そして木村にも向けられる。

「ひねくれてる?」

木村は心の底から不思議そうに言った。
「ひねくれてるっていうか、どっちかっていうと、中居は甘えてるんじゃないの?俺らに」

しーんと、会議室の空気は凍り付いたように思えたが、その空気を一切気にせず、木村が笑顔で続ける。

「なんだかんだ言いながら、みんなわざわざ顔出してくれて、嬉しい。ありがとうな」

「…!」
がたん!と吾郎が立ち上がり、再び中空に叫んだ。
「惚れてまうやろーーーー!!」
惚れてまうやろー…!惚れてまうやろーーー…!!
会議室にこだまが響いた。

よーし解った!吾郎!俺らの生まれ年のワインもってこーい!
了解!
そんなやりとりの後、一時間で吾郎が戻ってきて、慎吾と剛が料理を用意。ケーキはレッドベルベットケーキ。
「そうねー、甘えられてると思うと、許せるね」
「甘えてないし」
吾郎にワインを注がれながら中居は不機嫌そうに言うが。
その様子を、甘えてるんだね、という目で見られて、どういう態度をとればいいのか混乱してきて。
「お前が余計なこと言うから!」
と木村に当たって。

やっぱり甘えてるという下3人からの目と。

「え?みんな解ってんじゃないの?」
という不思議そうな木村の言葉のピッチャー返しを受ける羽目に陥る。

「木村」
「うん?」
「お前は、そのままでいいと思う」
「そうか?」
「そだね。木村くんはそのままで」
では歌います!立ち上がった中居の『Happy Birthday』は、音痴ではなかった。

素直が一番。

木村拓哉様、お誕生日おめでとうございます!

2021年11月13日

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