木 村拓哉様

 

【第X回 SMAP全体会議】

「聞いて」
中居が、マジメな顔で作業中の木村に言った。
「いいドラマ思いついたから。聞いて。いいから聞いて」
「何、いいドラマって…」
「いいから聞いてって。俺、自分が天才かと思ったから聞いて」
「あぁ?何?」

「グランメゾンTK」

「だっさ!!」
「そうなんだよ!だっさいんだよ!」
中居は、レンタル会議室の会議机を叩いて立ち上がる。

「なんで!?TK一世風靡したのに、なんでだっさの!?」

「僕もTKだけど」
「黙れツヨシ・クサナギ。小室哲哉、北野武、木村拓哉の仲間になれると思うなよ」
「なんでよ!」
「あったねぇ」
吾郎が懐かしそうな顔になる。
「売れてる人、頭文字TK説」
「なのに、『グランメゾンTK』ってなるとだっさい」
中居はやれやれという風に首を振るが。
「でも、天才だな、と思って、俺」
「何が天才なんだよ」
「『グランメゾンTK』を思いついた天才?」

「なるほどなぁ」

慎吾が、わざわざ移動して壁にもたれてから口を開いた。
「中居はんらしいダサさですなぁ、ま、ええと思いますわ」
「誰だ、てめぇ」
「グランメゾン東京は、グランメゾントウキョウでも、グランメゾンTOKYOでもないのがええと思いますよ?」
「『グランメゾントウキョウハグランメゾントウキョウデモグランメゾントーキョーデモナイ』って何?」
当然の吾郎の疑問に、慎吾はいやいやと大きく首を振る。
「漢字で東京なのが、カタカナでトウキョウでも、アルファベットでTOKYOでもなくてええってことですやん!」

「あいつ関西弁ひどいな…」
「いや、あの人、関西人じゃないのに、キャラとして関西弁使ってる役だから、あってる」
グランメゾンTKを思いついた天才と、グランメゾン東京に出演中の二人はこそこそ話し合う。

「グランメゾンTKってどんなドラマなの?」
吾郎の、当然の疑問シリーズ。
「数年前、パリで二つ星レストランをやっていたカリスマシェフTKが、陰謀めいた事件で失脚し、その後ある出会いがあり、再びかつての仲間を集めてグランメゾン東京で三つ星を取ろうとする物語?」

そのストーリーに、慎吾はぱちぱちと瞬きした。
「なんか、どっかで聞いたことあるような話でんなぁ」
あっはっは。
「数年前に、陰謀が」
ニコニコと吾郎が繰り返し、あっはっは!ニコニコ!が数度繰り返されながら、中居に目線が向けられる。
向けられた中居は、いやいや、と、手を振った。

「そんな陳腐な話じゃない」
「陳腐言うな!」

「数年前、パリで二つ星レストランをやっていたカリスマシェフTKが、陰謀めいた事件で失脚し、その後、グランメゾン東京を目指す」

むしろ静かに中居は言い切った。が。

「ん?」
木村を筆頭に全員が首をかしげる。
「何が、違う?」
「グランメゾン東京を手に入れたTKは、続いて、グランメゾン日本を目指す」
「グランメゾン日本!?」
「日本一のグランメゾンだ。その先は、グランメゾンアジア、グランメゾン世界と続き、その先にグランメゾンコスモが!」
「ま、まさか…!」
「もちろん、その過程で、かつての敵が、友として、仲間として現れる。強敵と書いて友と読む!」
「少年ジャンプ方式!!」

「天才や!!」

江藤に扮しているつもりの慎吾ががくっ!と膝から落ちる。
「ほんまもんの天才や…!」
「まぁ、グランメゾンコスモあたりになると、どうやって撮影するかとかね、考えることは多いけど。あと、どんな相手と戦うんだっていう話で。そのあたりの造形アイディアは、REDLINEからいただきたいなと思ってる」
「天才やー!」

中居は、木村に手を差し伸べる。
「この話に、乗ってくれるか、TK」
「TK言うな」
しかし、差し伸べられたを、TKは握り返して。
「はい、できましたー」とグランメゾンコスモに思いをはせる3人に対しても言った。

「モンブラン・アマファソンです」

「可愛いー!」
きゃっきゃ!と写真を撮るSNS担当班。
「なぜ、自分の誕生日に、自分でケーキを作らねばならないのか…」
「まぁまぁ。お披露目したかったでしょー?自分も作れますよって見せたかったでしょー?」
解ってますよ、というように中居は木村の肩を叩く。
「まぁ、それは…、って早食いだな!」
「こんなちっちぇー菓子、すぐ食えるわ!」
「菓子言うな、菓子!」
SNSチームがきゃっきゃ写真を撮ってる間に、中居の皿には、ソースが少し残る程度になっていた。
「この菓子で、グランメゾン日本くらいまではいけると思う。まずはアジアとの闘いに備えて、メニューの構成を考えないといけないな。頼んだぞ、TK!」
「おまえはどの立場なんだ!」

グランメゾンTK、最初の強敵と書いて友と読む相手が、ビストロGIであるのだが、それは隠し玉としてまだとっておく中居だった。

木村拓哉様、お誕生日おめでとうございます!

2019年11月13日

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