木 村拓哉様

 

【第X回 SMAP全体会議】

「まぁ、俺も長年生きているが」
「そうだね、長生きだよね」
びしぃ。
一歳しか変わらない吾郎の背中に中居は手刀をたたき込む。
「いたっ!」
「長年生き、大勢の人間を見てきたが」
「そんな大勢でもなくない?中居くん人見知りだし」
うんうん、とうなずき合う慎吾と剛を無視し、中居は話を続ける。
「木村ほど、気持ちの優しい人間は見たことがない」
「どしたの、急に!」
「おまえあるか?」
慎吾の驚きに、中居はその倍驚いた顔を見せた。
「いや、木村くん優しいけど…」
「思いやりがあり、温かい。素直。人の想いをむげにしない。人を許す強さがある」
「そうだね」
背中の痛みを感じながら、吾郎は頷いたが、その視線を部屋の中に向けて、首を傾げた。
「でも、さすがに、怒るんじゃない?」
「怒るっていうか、あきれるんじゃない?この飾り付け」
手を動かしながら、切った色紙でわっかのリースを作っていた剛が、雑にテープをまた一つわっかを繋げた。
「ちょちょ、なんか、可愛いのがいいかなってますて?ますてってやつをおいたでしょうが!」
「中居くんが持ってきたマステって、今、世の中にこんだけマステあるのに、本気のマスキングテープじゃん」
白い、ただ白い、マスキングをするためのテープを、慎吾は取り上げる。
「もっとカラフルだし、模様もついてるし、マステで作品も作れるのに、白!これ昭和からあるよ!」
「昭和世代をゴミ扱いか!この昭和世代が!」
「同世代だよ!」
まぁ、白一色でも作品は作れますけども、と、会議室の、ことさらいつもよりも安っぽいタイプの会議室の壁に、慎吾は白のマステを千切っては貼り、千切っては貼る。
「はい、稲垣さん、そろそろ木村くるから。ちゃんと、それ用意して」
「これ…」
白い紙皿に、スナック菓子の盛り合わせを作れ、と吾郎は言われていた。
「この、ブルボン製品詰め合わせパックには、ちょっと、懐かしさがこみ上げてくるけど…」
不器用な手つきで袋を開けて、ルマンドだの、ホワイトロリータだのを紙皿に並べていく吾郎。
「ポッキーも、プリッツも、大量にあるから!」
「何したの!11月11日に!」
積み上げられているポッキー(プレーン)、プリッツ(まさかのロースト)を下3人は眺める。
「プリッツはサラダでしょうが」
「いや、もしかして、木村くんの好きなプリッツがロースト…?」
ひそひそと下3人は話し合い、まさか、そんなところに思いやりが!と思ったところで、本日の主役、木村拓哉が登場した。
「おっ!木村さん、誕生日おめでとう!」
「えっ?」
幼稚園のお誕生日会以下の飾り付け。これは主に担当している剛の手が遅かったことによるが、壁から壁に、短い2連のリボンリースが渡されているだけという 会場。安っぽい会議机に、プレーンな、プレーンすぎる紙皿に、ブルボンのお菓子、ポッキー、プリッツ。その他かっぱえびせんに、ジェネリックカール。
「誕生日、会…?」
「木村さんにファンタお出ししてファンタ」
「木村くん、ファンタ飲む?ファンタオレンジ」
「オランジーナとかではなく、ファンタオレンジ!」
しかし、渡されたプレーンな、プレーンすぎる白い紙コップを受け取り、ファンタオレンジ(1.5リットルペットボトル)を注がれる木村は、無表情から、にっ、と笑顔になった。

「すげー、ウケる。ありがとう」

その時。

中居が、目を閉じ、宙を仰いだ。

「これ。これこれ…」
「中居?どした?」
「中居くん?」
「癒やされる。邪気が払われる。天然無邪気により、全俺が浄化された」
「え?え??」
目を閉じたまま宙を仰いで動かない中居の肩を木村が揺さぶる。
「全俺が浄化って何っ?」
「尊い」
「何が!?」
「もう大丈夫だ」
ぱちっと目を開き、木村を見上げた中居が、力強い目で頷いた。
「じゃあ行ってくる」
「どこに!?」

レンタル会議室を出る前、中居は振り向いて、にかっっ!!とアイドル笑顔を見せた。

「…いや、あれ一ミリも浄化されてなくない?」
慎吾の声に、吾郎も頷く。
「浄化っていうより、戦って来る感じ?」
「マジであいつどーしたの」
かっぱえびせんをつまみながら、木村は中居が出て行ったドアを見る。
「何、癒されたって」
そう木村は笑ったが、吾郎は真面目な顔になる。
「でも、空気変わる。ね」
うん、と慎吾もうなづいた。
「よどんでたものがなくなる感じ。癒しより、払うかなぁ」
お前まで何言ってんの、とノールックで紙皿に手を伸ばし、え?!カール!と驚く木村だったが、わっかを作る(まだやってたんかい)剛の手は、力強く丁寧に動き出したし、ブルボンお菓子は、テーブルセッティングイベントですか?のように、美しく盛り合わせられた。壁に作られた、昔ながらの白マステのみで作られた作品は、白だけだからこそ素晴らしいのだ、というしかない出来映えにむかっている。

空気を変える。邪気を払う。確かに、何かに向かう前、木村に会えたら心強いな、そんな風に下3人は思った。

「ところでさぁ」ファンタとかっぱえびせんやポッキーを食べながら、木村は聞いた。
「これは、誕生日会?」
「中居くんが、いるものは用意するから体一つで来いって。でも、結局準備したの俺らだし。今時幼稚園でももっといいもん出すよ」
剛のぶちぶちに木村は笑った。

「中居っぽいなー!」

癒っされるわー。残った中居くんの邪気が払われるわー。

しみじみ思った3人だった。

「あ」
吾郎が木村に聞いた。
「好きなプリッツは?」
「トマプリ」
「だよねぇ!なんなの!この大量のローストプリッツ!」
中居の邪気はまだまだ続く。

木村拓哉様、天然無邪気な一年を。お誕生日おめでとうございます!

2018年11月13日

☆木村拓哉様(お 誕生日に寄せて) 17年版へ

☆木村拓哉様(お 誕生日に寄せて) 16年版へ

☆木村拓哉様(お 誕生日に寄せて) 15年版へ

☆木村拓哉様(お 誕生日に寄せて) 14年版へ

☆木村拓哉様(お 誕生日に寄せて) 13年版へ

☆木村拓哉様(お 誕生日に寄せて) 12年版へ

☆木村拓哉様(お 誕生日に寄せて) 11年版へ

☆木村拓哉様(お誕生日に寄せて) 10年版へ

☆木村拓哉様(お誕生日に寄せて) 09年版へ

☆木村拓哉様(お誕生日に寄せて) 08年版へ

☆木村拓哉様(お 誕生日に寄せて) 07年版へ

☆木村拓哉様(お 誕生日に寄せて) 06年版へ

☆木村拓哉様(お 誕生日に寄せて) 05年版へ

☆木村拓哉様(お 誕生日に寄せて) 04年版へ

☆木村拓哉様(お 誕生日に寄せて) 03年版へ

☆木村拓哉様(お 誕生日に寄せて) 02年版へ

☆木村拓哉様(お 誕生日に寄せて) 01年版へ

☆木村拓哉様(お 誕生日に寄せて) 00年版へ

☆木村拓哉様(お 誕生日に寄せて)99年版へ

☆木村拓哉様(お 誕生日に寄せて)98年版へ

☆木村拓哉様(お誕生 日に寄せて)97年版へ

トップへ