「ちょっと木村さん。稲垣さん、さすがねぇ」
「あー、聞きましたよ、中居さん。あれでしょう?自分の誕生日に舞台の発表ってやつでしょう?」
「そうそう。さすが稲垣さん」
「「あざとーーーい♪」」
いわゆるSMAPのツートップが声を合わせるのを、吾郎は『すーん』とした気持ちで眺める。
12月8日、吾郎ちゃん誕生日だしパーティーしましょうよー!と慎吾から連絡があり、毎度ありがたいなといつもの『会議室』にやってきたら、ツートップと3人にされた。
しんつよはケーキの仕上げがあるとフロアの給湯室を占有するために部屋を出ており、2人揃ってスネオとジャイアンモードの2人と一緒にされると。
大変うざい。
「自分の誕生日に発表して、誕生日プレゼント代わりにチケット買ってってことでしょー?」
「さすがよねーー、やっぱり、王子様はやることが違うわね〜♪」
「「マーメイドプリンスーー♪♪」」
「うざっ!なんで、おねえ!?」
「やだこわーい」
「王子様こわぁい」
きゃーーー!!と、手を握りあいながら、オネエスネオ&ジャイアンがぶーぶー言う。
「どうせ可愛い探偵さんやるのよ、あの人」
あの人、と中居が吾郎を指さし、
「そうそう。しょぼくれてても可愛いっていうね」
木村も同じように指先をピンと反らせて指さす。
「え、待って待って?しょぼくれてるからこそ、可愛いのかも!」
「えー!絶対チケット当てたーい!しょぼきゃわ探偵みたーい!」
「そうよね、そうよね!」
握った手をぶんぶん振りながら2人はうなずき合う。
「でも、今日誕生日の稲垣さんの舞台じゃなぁい?」
中居が、まぶたをパチパチさせながら上目遣いで吾郎を見上げるが、見上げられてる吾郎からは、目つきの悪いヤンキーから睨み上げられているようにしか思えない。
その、中居の顔が、すぱっ!と木村に向けられた。
「いくらかかる?」
「1公演11,500円」
「公演数が20回。つまり」
「230,000円」
「23万かぁ〜」
「中居のランチ代くらいだなー」
「木村のカフェ代くだいじゃねぇ?」
そのまま真顔で2人は吾郎に言った。
「いい席欲しいつったらいくら積んだらいいの?」
「来ないでしょ僕の舞台!木村くんはともかく、中居くん絶対こないでしょ!」
「絶対ってなんだよ!おまえが俺の何を知ってんだよ!」
「木村くんには一番いい席のチケット上げますっ!いつのがいい〜?」
にこぉ、っとアイドル炸裂の笑顔を木村に向けようとした吾郎の視界に、中居の顔が割って入る。
「メンバー内差別すんな!」
その中居の顔を避けて、木村に笑顔を向けようとする吾郎の動きが面白すぎて。
「ダメダメダメ!ケーキ落ちる!やめて!」
ケーキを大きなトレイに乗せて会議室に戻ってきた慎吾が膝から崩れ落ちる。
「危ない危ない!」
剛がトレイをフォローして、かろうじて落とさずにすんだが、慎吾の笑いはしばらく収まらなかった。
「いやー、いいコンテンポラリーダンスだったよ、吾郎ちゃん」
涙をぬぐいながら慎吾が拍手する。
「今度の舞台、ぜひそのダンス取り入れて欲しい」
「コンテンポラリーダンスって意味解って言ってる!?」
「なんか、よく解らない動きだなって思ったら、コンテンポラリーダンスって言えばいいんだよね?」
「大体あってる」
中居が慎吾に賛同して吾郎をさらに激高させたが、まあまあと剛がトレイに乗せたケーキを吾郎の前に進める。ケーキの上にはシルバーのケーキドームがかぶさっていて、開けて開けてとにこにこ笑顔で言ってきた。
そう。
所詮、僕の味方はこの日だまりのような笑顔の草g剛くんだけさ…。
そう己を慰めながらぱかっとドームを開けた吾郎はそのまま硬直した。
草g剛画伯作「吾郎さん」をパティシエ慎吾の力で立体化させた、驚異の、脅威の、狂気のバースデーケーキだった。
「なまじ味がいいから余計腹立つ!!」
吾郎様の舞台、マジで楽しみです。
23万かー(笑)
2021年12月8日