稲垣吾郎様goro

ぴろりん♪

メールの着信音がしたので、吾郎はスマホに目をやった。
誕生日なので、何度も何度もその音を聞いている。

届いていたのは慎吾からのメールで、添付ファイルがついていた。開いてみると、剛との誕生日メッセージだった。

「へー」

ラジオの収録中の二人からのメッセージを微笑ましい気持ちで吾郎は眺めた。

『Happy Birthday to you Happy Birthday to you
Happy Birthday Dear ごろちゃーん、Happy Birthday to you♪』映像の中で手をふる慎吾が、おめでとー!と言ってくれて、背後でギターを弾いている剛もおめでとーおめでとーと言ってくれている。
『Happy Birthday、稲垣吾郎ー』
『よい1年をー!』

ありがとうー、と心で呟いたところで、もう一度Happy Birthdayの演奏が始まった。
動画が自動ループしてるのかと思ったが、さっきとは音が違う。
「…ギターの音が二つある…?」

『Happy Birthday〜♪』

「この声…!?」
張りのあるよく通る声。

『to you〜♪』

「この間の取り方…!」

『Happy Birthday Dear 吾郎〜♪』

「木村くん!?」
映像に、ギターを弾きながら入り込んできたのは紛れもなく木村拓哉。
そして。

『はっぴばーすでーーつーーゆうううーーーーー!』

「中居くんだーー!!」
突拍子もない音程で、マイクを持った手の形で、中居がカメラ前にアップで映り込む。
「近い近い近い!」

『吾郎誕生日おめでとうー』
『おっめでとーう!』

「どうしたどうした!何があったBayFM!」

『いやー、ごろちゃん、誕生日ですよー』
『あいつもしじゅうしちかー』
『言い方がおじいちゃんだね、中居くん』
それなりの距離を取りつつだが、慎吾と剛が向かい合っていたテーブルのサイドに、木村と中居が座る。
『はい、これ』
木村がワインのボトルをテーブルに置き、はいはい、と、慎吾がグラスを4つ持ってくる。
『吾郎ちゃん、お誕生日ですよ。おめでたいねー』
『中居、ケーキおまえ』
『ケーキ、俺?ケーキいる!?』
うっそーと言いながらフレームアウトした中居は、どでかいケーキ箱を持って戻ってきた。
『でっか!』
『まぁ、稲垣吾郎の誕生日ともなると、このくらいのランクじゃないとさぁ』
『ケーキのランクって、大きさなのー?』
と、無造作に箱を開けた剛が、しばし固まる。
『どしたー?』
続いて覗き込んだ慎吾も固まる。

『これは、何…?』
ケーキを覗き込んで、口を聞けたのは木村だけだった。
『何?これが何って、吾郎だろ』

慎吾が固定カメラを取り上げてケーキに近づける。

「きゃーーーー!!!!」

中居画伯、渾身の『稲垣吾郎』がそこには描かれていた。

『ケーキ屋さんもさー、ここまで再現しなくても、多少アレンジくわえるとかできなかったのー?』
ケーキの表面を外してそっと見えない場所に置き、ケーキ本体をつつきながら慎吾が言う。
『待て待て。乾杯はどうした乾杯』
『あ、ワインワイン』
木村が開けたワインをグラスに注ぎ、4人は乾杯した。
『ごろちゃん、誕生日おめでとー!』
『おめでとうー!』

「いやいやいや!主役不在でしょう!何やってくれてんの!何これ!スマスマ、パリ編!?」
わいわいと吾郎の話をしている4人の映像を眺めながら吾郎は声を上げた。
その映像は、無駄に1時間続いた。

年末年始はベートーベンな吾郎様。
今年も、良い1年をー!

稲垣吾郎様。お誕生日おめでとうございます♪

2020年12月8日

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