稲垣吾郎様goro

『第?回 SMAP全体会議の結果』

「ということでね、12月8日ですよ、中居さん」
「はい。12月8日」
「あれ、ピンときてない?12月8日、ですよ?」
「12月8日。…が、どうかしました?」
「またまたー」
木村は、ぽん、と中居の肩を叩く。
「お気にでしょー?中居さんのお気に、稲垣吾郎さんの誕生日じゃないですかー」
「お気にじゃないけど、そうですか、誕生日ですか、稲垣さん」
「いや、絶対お気にだろ、吾郎」
「おまえの吾郎お気に度合の足元にも及ばねーし、そもそもお気にじゃねぇ」
「はー、素直じゃない」
やれやれと首を振った木村は、ここから本題です、という体勢を取る。
「今、稲垣さんといえばベートーベンですよ」
「ベートーベン」
「ベートーベンといえば、中居さん、何かありますか?」
「ベートーベン…。いや、でも、授業で出てくる音楽家の中で、すごい有名じゃないですか?」
「多分ダントツ有名だと思いますね」
「逆に木村さんは、何かあります?ベートーベン」
「まぁ、小学校の音楽室のベートーベンの絵が、夜中に笑う程度ですかね」
「あー、七不思議あるある」
「いや、マジで」
「は?」
「夜中じゃないんですけど、放課後、誰もいないはずの音楽室から笑い声がする。そのリズムが運命と一緒だって噂が」
「じゃじゃじゃじゃーーんって笑ってんですか」
「聞いたことあるんですよ、僕も」
「いやいや」
徹底的にリアリストの中居が、今度は木村の肩を叩き返す。
「それ、誰か人間が笑ってんだよ?」
真顔で中居に言われ、木村も真顔で言いかえす。
「じゃあ人間でもいいけど。ははは・はーーっ!って、運命のリズムで笑ってる人間の方が、ベートーベンの肖像画が笑うより怖くないか?」
「…確かに…!」
大げさに口元を押さえた中居が、大げさに怖い、という顔を作った。
「怖いと言えば」
「まだ、あるんですか木村さん」
「笑うリズムが運命と一緒、といえば、たいていの人の通じるだろうなっていうのも怖いですね、ま、これは怖いというよりすごいか」
「すごいですよねー。湘南のヤンキーでも、『ベートーベンの運命』といえば解りますからね。ま、じゃじゃじゃじゃーーん、以降のことは解りませんよ?解りませんけども、じゃじゃじゃじゃーーんは解る」
「第九も解りますよね」
「大工」
「そのイントネーションはカーペンターの方ですね?ナンバーナインです」
「ナンバーナイン」
「うわー、中居さん、素敵なきょとん顔ですね。大勢の演出家が欲しがってますよ、そのきょとん顔」
「『ナンバーナイン〜』?」
「あっ、あざとい。あざといすぎです、あざといオブ中居。それはね、コントの演出家は欲しがってると思いますけど、ドラマ、映画では求められてないかもしれないですね」
「ドラマ映画に、そもそも俺が求められていない。痛い」
裏拳により胸元から肩にかけてのつっこみが見事にヒットした。
「いい加減なんかやれ。三匹の若旦那の後に、街弁前川の事件簿を金曜8時のテレ東でやれ」
「なんだよ、街弁前川の事件簿って!」
「エリート検事がとんでもない事件を起こしたっていう小説、映画があるんだよ。その小説、映画で、検事の大学時代の友人として登場する街弁前川が、街の小さな事件を通してほのぼのと笑いや涙を届けるといった」
「それは映画で前川をやった人に演じてもらえ!」
「大場さんやってくんねーかなー…!」
「後、三匹の若旦那ってなんだ」
「え?中居さんお気にの稲垣さんと、中居さんお気にの香取さんと、中居さんお気にの草gさんが、商店街の若旦那役で登場する、笑いと涙と人情の金曜8時テレ東枠ドラマですよ」
「その3人とも、木村さんのお気に枠殿堂入りの方々ですよね。そこまでのお気にじゃないし、稲垣さんはとりわけお気にじゃないです。ただ!」
中居はまっすぐな目で木村を見つめた。
「稲垣さんの、お気には、俺です」
「解る!!」

そこで、二人はすっと距離をとり、正面に体を向けた。

「この歓びを歌いましょう」
木村の言葉に流れてくる交響曲第9番、第四楽章、歓喜の歌。
木村は生声で、中居は口パクで歌うが、その口パクが素晴らしい。後に木村は、まるで吾郎が乗り移ったかのような、なんでそんなに下手なんだ、何年口パクやってんだ、という口パクだったと長く語り継いだという。

「それでは、NO.9不滅の戦慄、キャスト、スタッフ御一同様」
木村の言葉に続き、中居も入り、揃ってのご挨拶となる。
「本日、12月8日、NO.9大阪公演も、張り切ってどうぞ!以上、ザ・ツートップでした!」

「…。これは。これは、何が、起こって、いるの…?」
手の空いたキャストスタッフによるスタンディングオベーション大喝采の最中、登場したベートーベン吾郎がつぶやく。
「差し入れだって、お二人が」
ゲラゲラ笑っていた片桐さんに言われ、差し入れって何?と、ステージに見立てた休憩室奥で喝采を浴びている木村と中居を見る。
「あ、一応、一応ザ・ツートップの本来の、さげ?っていうんですか?決め台詞も見ていかれます?」
「みたいみたーい!」
片桐の声に、中居が大げさに頭を下げ、そして、木村に言った。
「あんたとはもうやってられへんわ!」
「俺らが言うとシャレにならないからやめとけ!」
「「ザ・ツートップでしたー!」」
そして、同じ方向にはけていく。そのままドアをあけて、二人は出ていき、結局吾郎の前には登場しなかった。

「差し入れって…、何なの…」
ちゃんとした、豪華焼き肉弁やら、ラーメン屋が店ごとやってくるやらの、差し入れにプラスして、なんだったの、ザ・ツートップって。ザ・ツートップってなんなの…!

その日のベートーベンの苦悩の演技は、人々の心に刺さりまくったという。

稲垣吾郎様。お誕生日おめでとうございます♪

2018年12月8日

17お誕生日メッセージへ

16お誕生日メッセージへ

15お誕生日メッセージへ

14お誕生日メッセージへ

13お誕生日メッセージへ

12お誕生日メッセージへ

11お誕生日メッセージへ

10お誕生日メッセージへ

09お誕生日メッセージへ

08お誕生日メッセージへ

07お誕生日メッセージへ

06お誕生日メッセージへ

05お誕生日メッセージへ

04お誕生日メッセージへ

03お誕生日メッセージへ

02お誕生日メッセージへ

01お誕生日メッセージへ

00年お誕生日メッセージ へ

99年お誕生日メッセージ へ

98年お誕生日メッセージ へ

97年お誕生日メッセージ へ

96年お誕生日メッ セージへ

トップへ