中居正広様
nakai

【第XX回 SMAP全体会議】

「海のある町の、国道沿いのダイナー」

今年暑いねー!
40度って冗談じゃねーの?
レンタル会議室に招集されて、まずは天候の話などしているくらいの早いタイミングで、部屋の一番奥にいた中居が言った。

「…ん?」

何と聞き間違えたんだ?と木村が振り返る。
「なんて言った?」
「海のある町の国道沿いのダイナー」
「うみのあるまちのこくどうぞいのだいなー?」
「そのダイナーに、ある男がやってくる」
「おい、どうしたどうした!?」
「やばいよ!さすが気温40度の夏だよ!」
中居が会議室の中を歩き出し、4人は中居を避けるように逃げ惑う。
大して広くもない会議室の中、自らの前でメンバーの海が割れるように開いていくのをどこか楽しみながら、中居は歩き続けた。

「そのダイナーに一人の男がやってくる」
「何これ、口述筆記…っ?」
剛の背中に無理矢理隠れる様にしている慎吾がおそるおそる顔を出す。
「男は、十年前、そのダイナーでした約束を果たしにやってきた」
「ん?」
壁に張り付いていた吾郎が、振り返る。
「その話…?」

「客の来ないダイナーのオーナーは、陽気なおねえ」
「え?僕っ?」
振り返った吾郎を、中居が腕を伸ばして指し示す。
「そして、珍しい先客は、陽気な少年」
「えっ?僕少年なのっ?」
「陽気な夏の少年…」
「少年…!?」
「少年風な男」
「やべーヤツじゃん!」
少年風、と言われたのが慎吾。
「そして、休暇でやってきた謎の男」
木村が、あ、俺?という顔になったので、中居は首を振る。
「謎の男」
そう言いながら、自分の胸に触れる。
「中居がっ?」
「中居くんが、やるのっ?!」
「じゃ、じゃあ僕が…?」
まだ名前が出ていない剛が前に出てきて、中居に肩を押される。とーん!押される。出てくんな!と押される。そしてそのとーん!と剛の肩を押した手を、木村の方に向ける。
「十年前の約束を果たしに来た男」
「俺が…『十年前の約束を果たしに来た男』…!」
ミスユニバースに選ばれた美女のような、信じられない、でも、誇らしいというキラキラした表情で、胸の上で両手を重ねる木村。

「木村が約束を果たしに来るという物語で、今年俺は一財産を築く!」
「言い方!!」
「一攫千金を!」
「一緒!」
「いや、だって、十年前の約束を果たすために海辺のダイナーに一人の男がやってくる、なんて、独創的かつ前代未聞のストーリーだぞ?それくらいの夢を見たって」

「いやいやいやいや」
陽気なおねえ呼ばわりされた吾郎が、中居の真ん前に立つ。
「何」
「それ、僕のミュージカルのストーリーだよね」
「は?」
突然エストニア語で話しかけられたくらいの驚いた顔で中居が首を傾げる。
「この独創的かつ前代未聞のオリジナリティの固まりみたいなストーリーが、吾郎のミュージカルと一緒だと?は?何ゆってんの?大丈夫?」
「大丈夫はそっち!」
「そんな訳ねーじゃん!」
あっはっは!大げさに中居は腹を抱えて笑う。
「俺が今朝、この誕生日の朝に、天啓を受けた独創的かつ前代未聞のオリジナリティの固まりみたいな唯一無二のストーリーが、吾郎のミュージカルと一緒だなんて」
「一緒です!十年前の約束を果たしに来た男は僕です!」
「いやいや…」
笑いすぎて息できないという風に、中居は豪華な会議用椅子に倒れ込む。
「おもっしろ!稲垣吾郎おもしろっ!まま、いいわ。そのネタはいいわ。ともかく、このストーリーで、この1年、がっぽがっぽ稼ぐ!」
「何の話だ…」
ゲラゲラ笑っていた中居が、真顔で立ち上がった。
「誕生日だからといって、人から貰おうとばかり考えるような、そんなさもしい考えは俺にはない。自分の機嫌は自分で取る!」
「いい話だけど!だったら、本気でオリジナリティ溢れるストーリーにしろよ!」
「…だって、京都でこそっとやってる舞台だろ…?きづかねーだろ、普通」
「気づくよ!こそっとじゃないよっ!」
「映画でやったら気づかれないじゃね?」
「気づく!」
絶対気づく訳ねーけどなぁ。いや、でも、面白そうだけどね、ある程度の一攫千金はできそうと慎吾と中居が話し出したところで。

「あのう」

剛が手を挙げた。
「僕は?」
「ん?」
「僕の役は?」
「ん??」
中居は、指を折りながら数える。
「十年前の約束を果たしに来た男、陽気なおねえ、少年みたいな男、謎の男…。あれ?」
1・2・3・4、
1・2・3・4、と繰り返したが、どうしても5にならない。
「あれ?」
「僕」
「えっとー…」
剛の真顔に、中居も真顔で答える。
「釣具屋のじじいか、トラックの運ちゃんで、なんか、最後、どーん!と登場して、全部もってくって感じの?」
「なんでそんな役!」
「最後にどーん!って言ってんじゃねぇか!映画だったら、エンドロールが終わっても席を立たないでね、の最後のとこだよ!」
「本編出してよ!」
「無理だよ!この
独創的かつ前代未聞のオリジナリティの固まりみたいな唯一無二のストーリーのためのシナリオに5人目は存在できねぇよ!」

2018年8月18日、この1年をかけた、中居正広の新しい挑戦が始まった。

2018年8月18日
お誕生日おめでとうございます。

中居正広様

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)17年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)16年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)15年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)14年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)13年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)12年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)11年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)10年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)09年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)08年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)07年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて 06年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)05年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)04年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)03年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)02年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)01年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)00年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)99年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)98年版

☆中居正広様(お誕生日に寄せて)97年版

トップへ