草なぎ剛誕生日によせて

草彅剛様

第五回　SMAP全体会議。

「だいぶ面倒くさくなってきた」
「解る」

「ちょっと！」

7月9日。とある会議室で、入り口に背中を向ける席に座っていた剛が立ち上がり、限界まで椅子をリクライニングさせてふんぞり返っている中居と、机に肘をついた手で顎を支えながらうなずいている木村を見る。
「誕生日！僕の！」
「いや、誕生日なんてさ、知ってる？草彅。実は、人間には誰にだってあるんだぞ？」
「マジで！？」
木村が信じられない！という顔で隣に座る中居を見た。
「あれ？木村知らなかった？実はおまえにも誕生日はある」
「俺にも！？」
「そして俺にも！」
「ヤバイじゃん！」
「俺もあるー」
「そう。香取にもある。ただ」
中居は、ジャストのタイミングで前髪に触れていた吾郎を見る。
「稲垣は、いつの間にか『いた』らしい」
「は？」
「『いた』？『あった』？？」
「人を現象みたいに言わないで！」
きっ！と中居を見た吾郎は、あ、でも、と微笑んだ。
「妖精みたいでもあるね」
「キモっ！」
「いや、見てー？」
慎吾はiPhoneの画面上に、妖精吾郎の絵を描いてゲラゲラ笑う。見せられた木村も爆笑した。
「羽根が雑！」
「飛び方下手だと思うなー、ごろちゃん」

バンバン！

剛が机を叩く。

「僕の誕生日でしょー！？」
「だからー」
面倒くさそうに中居が手を振る。
「吾郎はともかく、誰にでも誕生日はあるってことは、毎日毎日誰かの誕生日だから、そんな1年365日誕生日サプライズとか面倒くさい」
「すげーハキハキ言ったな、中居」
「毎日誰かの誕生日。みんな誕生日おめでとう！吾郎以外」
「なんで！」
「なんで！！」
吾郎と剛の声が綺麗に揃ったところで、慎吾が、立ち上がる。
「まま、つよぽん。もう44回も誕生日やったんだし、いいじゃんいいじゃん。ごろちゃんは、いつの間にかそこにいあったんだからいいじゃん」
「なんで僕が巻き込まれてるのか、誰か説明して？」
「毎日誰かの誕生日。中居くんとは思えない素敵フレーズだよ。拍手だよ、拍手」
「やめろよー、照れるよー」
中居も立ち上がり、慎吾の鷹揚な拍手を両手を広げて受け入れる。
木村もスタンディングオベーションに加わり、吾郎が机に突っ伏した。

「やだもう！ジャイアンたち！！」

剛は、なお声を上げる。
「ねぇ誕生日サプライズは！？ビンテージのジーパンとか！ビンテージのギターとか！ビンテージのバイクとか！！」

「あいつ、素朴ないいキャラと言われてる割に、欲ぶけぇな…」
「誕生日プレゼントで、バイク貰えると思ってるあたり、どうかしてんな」
「解った解ったつよぽん。プレイスレスなプレゼントあげるから。そんな怒らないで」
慎吾がホワイトボードに剛のイラストを描く。
「はい。誕生日おめでとうー」
「どーすんのそれを！」
「バカだな、草彅！それ、初個展がルーブルっていう、美術界から総スカンを食らう（予想）風雲児、香取慎吾画伯の直筆だぞ。ホワイトボードごと持って帰れよ」
「持って帰れないよ！」
「慎吾が死にでもしたら、すげー値が作って！ビンテージのバイクくらい買えるって！」
「いや、まぁ、死ななくても、そこそこの値がつくんじゃね？どうやって保護したらいいんだ？」
木村がホワイトボートに近づき、線を見つめる。
「これごと額に入れる？ホワイトボードのマーカーって、空気にふれなきゃ大丈夫とかあんの？」
慎吾も首を傾げる。
「さすがにそこまでは解らないなぁ。でも、これって、消えるっていうのがいいって思ったんだけど」
「消したー！」
ささっとホワイトボードを消して、隅々まで消して消して、使う前のより綺麗な状態にホワイトボードを戻す。
「想いを込めて描いたつよぽんの絵は、つよぽんの魂の中だけにそっと残ればいい。プレゼントって、そういうものじゃない？」
「いいこと言うなー、香取画伯…！」
うんうん。中居が、感慨深そうに何度も頷く。
「モノより思い出だな」
「プライスレス」
うんうん。中居と同じリズムで頷きながら、木村も続ける。

「なんか！ちょうだい！！」

今日は丸め込まれない男だった剛のために、3人はノリノリで、そして吾郎は、大変不本意に、剛の絵を寄せ描きし、サインも、日付も書かされた。
「よし。これ何かあったら売ろ」
「やめろ！」
「今日、黒いなー、つよぽん」
ゲラゲラ笑いながら、片手間に慎吾が全員のイラストを描いたメモ書きは、回り回って大変な高額で引き取られることになるが、それはまた別の話。

２０１８年７月９日

草彅剛様