2019/4/1

2019年度が始まった、ということで、SMAP全体会議が開催された。
今回のレンタル会議スペースにはテレビがある。
「まぁね、これは見ないとでしょ!」

本日のSMAP全体会議のアジェンダは以下の通り。

  1. 2019年度期初の挨拶を、くじ引きで当たったメンバーから。当たりかはずれかは挨拶の内容による。
  2. 事前通知の通り、自分が考えてきた渾身の年号を発表する。
  3. 実際の改元発表を見る。万が一にも当たったようなメンバーがいれば、どうやったら事前に考えてたのがこれなんですよ!を証明できるか検討す る。
    (ビデオでも撮ってればいいじゃん。テレビ画面後ろにいれて、と、インストグラマー慎吾が撮影を提案している)
  4. 2019年度も、そして新しい元号元年もがんばりましょう、の挨拶を当たったメンバーから。当たりかはずれかは挨拶の内容による。

このアジェンダに従ってSMAP全体会議は進んでいたが、それらを吹っ飛ばされる出来事が起こった。

『平成の時代のヒット曲に『世界の一つだけの花』という歌がありましたが、次の時代を担う若者達が明日への希望とともにそれぞれの花を大きく咲かせることができる、そのような若者達にとってですね、希望にみちあふれた日本を国民の皆様と友に作り上げていきたいと思っています』

「は?」
11時過ぎ、新しい元号が発表され、テレビを見ながら令和か~、なんか、響き綺麗だね、それは想像しなかったなぁ。などとわいわい話している中で、総理の記者会見で突然『世界に一つだけの花』が登場したのだ。
「でも、安部さん、今世界『の』一つだけの花って言わなかった?」
「そこじゃねぇ!」
巻き戻しできねーの?ってテレビのリモコンを持つ中居に、木村がつっこむ。
「すーごいね」
吾郎がしみじみ言った。
「改元します、新元号これです、のタイミングで出てくる『世界に一つだけの花』」
「春の、えっと何?高校野球も、行進曲が世界だったんでしょ?」
「春の高校野球…、いや、確かに春の高校野球だけど、センバツな」
慎吾の言葉を聞き流せない中居だ。
平成最後のセンバツに、平成の名曲ということで『世界に一つだけの花』が選ばれた。
「それだけでもすげーって思ったけどね」
木村の言葉に、四人が頷く。
平成最大のヒット曲、おそらく今後出ることはないであろう、オリコン史上3曲しかないトリプルミリオンシングル。それが、平成最後、と名付けられる大会で使われるのは、まだ解る。まぁ、まだ解る。しかし。

「改元に関わってくるとは…」
「怖い…」
思わず吾郎は呟いていた。
「怖いって、何が、ごろさん」
「SMAP、怖いなと思って…」
「え?」
「だって、SMAPって、僕らでしょ…?『SMAP』ってものがある訳じゃないのに、なんか…」
吾郎の表情は、深刻にものになっていた。
「人形に、命が吹き込まれ…」
「自由に、動き出した…」
「こわこわっ!」
両腕で体を抱いて、中居が大げさに震える。
「SMAP、こわー!」
口々に怖、こわーと言いながら、飲んでたお茶やら、食べてたお菓子やら、形ばかりに作ってみた書類などを片付け、じゃあ、退室しますか、となったのだが。
「慎吾ー、なんで寝ちゃってんのー?」
いつの間にか慎吾が机に突っ伏して寝ていた。剛が何度か肩を叩いても起きない。
「何?さっきまで起きてたじゃん?おい、慎吾」
木村が反対側の肩を叩いても、揺れるだけで顔を上げることはない。
とはいえ、いつの間にか慎吾が寝ている、という状況に4人は慣れている。
「おーい、慎吾ー、これ最後に部屋返す人が支払いするからなー。今日はおまえ払えよ~」
「慎吾が払ってくれるんなら、なんか、もっと頼めばよかったかな。飲み物とか」
「せこい。吾郎がせこい」
「慎吾ー?ほんとに帰るよー?いいのー?」
「いいよいいよ。まぁ、借りてる時間まだあるし、最終的には会議室の人が起こしにくるだろ、寝かせとけよ」
「そうー?」
中居の言葉に、もう一つ納得できないと剛は首をひねり、最後にドアを閉めながら、ほんとに帰るからねー!慎吾ー!と声をかけて会議室を出た。

その直後、ドアが内側からの何かにぶい音がして、衝撃を受けたように、ドアが一瞬わずかに膨らんだ。

「…え?」
「剛、どんだけ強くドア閉めてんだよ」
「え?俺?え?」
ドアと、自分の手を何度も剛は見て、そんなドア強く閉めてないし!と言い返す。
「それより、さっきの音、何…?」
吾郎がおそるおそるドアに触れるが、別に何の変わりもない。
「慎吾、大丈夫…?」
「あ、開けろよ、吾郎」
「や、やだよ、中居くん開けなよ!
揉める二人の間に割って入り、木村がドアを開けて、中の様子をうかがう。
「慎吾ー?」
「んー…?」
室内は電気を消してあり、窓のブラインドも下ろした状態なので真昼とはいえ薄暗い。その部屋の奥から、慎吾の寝起きの声がした。
「大丈夫かー?」
「んー…?何がー?大丈夫ー?」
「もう、帰るぞ」
「うん、あー、寝たー」
起き上がった慎吾が、部屋を出てくる。
「ほんと、どこでも、いつでも寝るなぁ、おまえ」
「そーだねー」
後ろ手にドアを閉めた慎吾を見て、剛が瞬きする。
「慎吾、目が…」
「目?」
上3人が慎吾の目をみる。寝起きの、というか、まだ寝てる、という目。
「え?慎吾の目がどうかした?」
「あれ?」
剛は、昔のアニメか、のような仕草で、自分の目をごしごしした。
「あれ?さっき、白目が黒目で、黒目が白目じゃなかった?」
「何それ-!」
慎吾が笑う。
「そんな、おまえが俺で俺がおまえでみたいな。私たち?」
「入れ替わってるー!?みたいな」
慎吾と吾郎が謎のコンビネーションを見せて、笑いながら歩き出す。
「おまえが大丈夫か?」
木村に心配され、中居に、最後になったやつが支払いだぞ、と言われ、再度までドアの前に立っていた剛も4人が追う。

『でも、白目が黒目で、黒目が白目だったんだ…。』

To be continued…

(には多分ならない投げっぱなし全体会議)